第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
おっと。
これはマズい。
『お…おい。愛華?愛華??』
私はそう声をかけながら、愛華の背中に向かって歩き出し。
近くまで来たら、恐る恐るその顔を覗き込んだ。
その傍ら、当の本人は。
それまで気が付かなかったけど、コートに視線を落とし、小さくワナワナと震えていた。
「誰が…誰が“小学生体系”だ…!!」
『さすがに誰も言ってねーだろ、んなこと』
まぁ、そんなことだろうとは思ってたけれど。
まさかほんとに的中するなんて…
つか私が苛立っている場合じゃねぇ。
『“大丈夫か?”って聞くのは違うな?
試合開始時からずっと
大丈夫じゃなかったんだな?お前…』
「どうせ私は平均以下だよ…
別に成りたくてこうなったんじゃ…!
好きで低身長なんじゃ…!!」
『よーしよし落ち着け?落ち着け??』
早い話、愛華のコンプレックスなんだ。
この…“身長”の話。
相手選手に何を言われたかは知らないけれど、愛華の立腹具合を見る限り、相当腹に据えかねることを言われたのだろう。
というのも、これにはちゃんと理由があって。
中1の時は、全員が第2成長期前でほとんど同じだった身長も。
1年から2年にかけて、私含め周りがグンッ!って大きくなる傍ら。
なぜか愛華だけは平行線だったんだよな。
前にも言った通り、愛華は私ら5人の中で一番最後にバスケを始めた。
だから「バスケもっと早く始めてたら、身長も問題なく伸びたんじゃねーか?」と、考えたこともあった。
けれど、私の命が危険に晒される可能性も、ゼロとは言い切れないから、本人に言ったことはまだ一度もない。
こうなると、愛華の機嫌を直すのは少々骨が折れる。
でも…
『分かった分かった。』
こいう時の、一番平和的な解決方法を、私は知っている。
まぁ、ちょっと“財布事情”には影響あるけれど。
『んじゃ帰りに花屋で
なんでも好きなブーケ買ってやっから…!』
花(好きなもの)でお茶を濁し、愛華の気を逸らす。