第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
“最善を見極めることに長けている”とは言ったものの、愛華は遂行可能と判断した作戦は、よっぽどの事がない限り必ず行動に移す。
それが仮に、1対3が必須だとしても、「出来る」と判断されればこちらに拒否権はない。
筋書き通りに行けば、確かに勝利できると確信しているから。
しかし、逆に言えば“もしもの場合”を計算に入れていないという事だ。
筋書き通りにいかないのがスポーツ。
他の力の介入があるのが普通だ。
愛華は、まだそれに慣れていない。
プレイヤーとしての実力はある。
けれど、「PGとしてのそれも同等か」と聞かれたら、きっとそうではないのだろう。
現に、あんなにシナリオ通りに上手くいくのは稀で、失敗した経験は数え切れない。
愛華のシナリオも、一度崩れるとそこから挽回するのは不可能だ。
無茶苦茶な仕事をするPGで参っているが、今のところその分の穴埋めは他の4人でなんとかしている。
愛華の筋書きは、確かに勝利に限りなく近いのだろう。
しかし、スポーツ向きではないことも確かだ。
それでも、愛華本人は“最善”以外には端から興味がない。
それに…
『向こうのキャプテンマジ気の毒』
こっちのシナリオ遂行のため、巻き込まれを食らった相手選手が不憫でならない。
『相っっっ変わらず相談も無しに
セコい作戦選びやがって…』
「私だって、転ばされたの許したぞ?」
『許されるべきはテメェーだよ詐欺師』
「女優って言ってもらえるかな??」
やっぱり、愛華(コイツ)とは考え方が何もかも違う。
主観で見たバスケの存在、とか。
点を奪い合うゲームに見出すもの、とか。
スタメンとしてコートに立つ意味、とか。
今でこそ、お互い成長して、チームメイトとしての関係を持つ事ができている。
だから、つい忘れそうになってしまう事なんだけど…
私と愛華は…
昔から変わらず、ずーっと好敵手(ライバル)のままだ。