第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
自陣へと戻る最中。
紗恵と詩織のそばを離れて、史奈が私の方に距離を縮めていることにはすぐに気が付いた。
なんであいつが私に近づいてくるのか、ってことに関しては以下略だ。
直前まで、紗恵と詩織が“よいしょ”して(くれて)いたから、今回ばかりはこっちに来ることもないと期待していたんだけれど。
期待は所詮“期待”ってことか…
「おい天!!見てたかよあたしのパーフェ」
だから私は、史奈の存在をすぐ隣に感じたら。
史奈が何かを言い切るよりも先に、史奈がいる方とは反対側に素早く身をかわしたんだ。
案の定、横目で見えた。
史奈の腕だったものと思われる残像を。
見事に、さっきまで私がいた場所を通過していたよ。
史奈の腕が私のすぐ隣の空を切ったことを確認したら、視線は前に向けたまま言ってやったよ。
『お前からのお裾分けは要んねーんだよ』
「んだよその言い草?!!」
私のそんな対応に、史奈は不服そうだった。
でも良かった。
「なんで避けんだよ?!」って言われなくて。
自陣に戻る間に馬鹿の相手を手早くすませて、私たちはそれぞれのディフェンスエリアについた。
それはそうと、史奈の“お裾分け”を避けてからずっと考えていた。
史奈のテンション全回復の容易さに関してな。