• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第5章 栄光の目前  〜決勝トーナメント準決勝〜


●藤堂 天● 〜東京体育館〜


私がボールを後ろに戻したことで、相手選手たちとボールの距離は必然的に大きくなってしまった。


それに「距離ができてしまった」とか、そんな単純な話じゃない。
なぜなら、ボールを所持する詩織を守るために、私が相手選手3人との間に入り、行手を阻んでいるから。
簡単に通してやるつもりもない。


それに、なんか勘違いしているみたいだけど。
私がここまでやっといて、その程度で終わるわけねぇーだろ。


『違ぇーよ…』

?「え…」


キャプテンの声がコートに響いたその瞬間から、この作戦は何一つ変わっていない。
全てが計画通りに進んでいる。


無駄なことは、一手だって踏んでいない。


ただ、単純じゃねぇーんだって。
キャプテンも、作戦も、私も…


私らも。


「いくよ!!」


ディフェンスにあたる私の背後で、覇気のある詩織の声が上がった。
まるで、これから自分が起こす行動が、あたかも偉大なことで、それを高らかに宣言しているようだった。


ただのシュートならこうはならない。
詩織ならもっと冷静にプレイする。


そうじゃないということは、これからあいつがやろうとしていることは“ただのシュート”じゃ収まらない、ってことだ。


そりゃそうだ。
ここで、終わらせてしまうわけにはいかないんだ。


『スリーって言われたら…』


なぜって、待っている奴らがいるんだから。


私と詩織が繋げたボールを。
そこから生まれる、数えきれないほどの選択肢を。


それは自分に繋がっていると。
その先には自分がいると、信じてやまない仲間がいる。


そいつらのためにも、途中で折れるわけにはいかねぇーんだよ。


だから手を広げた。
両腕を上げて、「ここから先は通すもんか」と。


『何としてもスリーなんだよ』


それが、果たさなければならない、私の大事な役目なんだ。


そう思った直後だった思う。
詩織が放ったであろうボールが。


私の真上を飛んで、私から遠のいて行ったのは。

/ 276ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp