第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
詩織は未だに、いつもと変わらぬ穏やかな目元で、「よく分からない」という視線を私に送ってくる。
だから私は、詩織と再び視線を合わせて…
静かに1回だけ、首を縦に振って頷いてみせた。
「詩織、お前も腹括れ」。
…という意味を含ませた上で。
意思疎通は、正確にできたと思う。
その証拠に、私が頷いてみせた直後。
「はっ!」とした表情を見せた次の瞬間には、詩織の目がガラリと変わっていた。
さっきまでの、垂れ目故の穏やかな目ではなく。
何かしらの目的を見据えた、意志のある強い目に…
あれは、Cの目だ。
そんな経緯で、決意を固めたオフェンスメンバー2人の間で。
愛華はついに、2本目のフリースローに挑み始める。
正確な“手順”を、踏むこともなく。な…?
だけど、今回に限っては「それが司令塔のご要望」ってことらしい。
“ルーティンが乱れている”。
そんなの、理由はひとつしかないだろ。
あれは、愛華からの“言葉なき指示”だった。
あれは…
つまり、あれは…
「 外すから、取りに行け 」
・・・・・・
つまりは、そういうことだ。