第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
“愛華の考えが分からない”。
正確に言うと、そうじゃない。
分かるんだ。
分かることには。
“愛華が、今やろうとしていること”。
それは分かってやれる。
それに関しては、多分詩織も同じなんだろう。
“何をしようとしているのかが分かる”からこそ、その意図を突き止めたくて仕方がない。
だから私に答えを求めてきた。
私と詩織が分からないのは別のこと。
“なぜか”だ。
なぜ愛華は、“それ”をやろうとしている?
なぜ、“その一手”をわざわざ挟む必要があるんだ。
単なるフリースローのはずなのに、どうしてここまで複雑になるのか。
それは、私たちのキャプテンが愛華だからなんだろう。
よりによってそいつが、“最善を見極める”ことに長けているから…
だから、悩んでいる余地なんてない。
キャプテンが“その気”なら、私はそれを受け入れなければならない。
文句や議論は、後でたっぷりする。
だから今だけは…
今この瞬間だけは。
「この場を決められるのは、愛華1人だけだ」。
そう思うことにして、手となり足となろうじゃないか。