第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
別視点で愛華の動きを見た詩織も、私と同じく。
愛華のルーティンが乱れていることに気付いたのだろう。
「見間違いじゃないよね?」とか、「おかしく見えるのワタシだけ?」とか。
そんな言葉が、詩織の声で脳内再生される。
この調子だと、スリーポイントラインの外側にいる紗恵と史奈も、例外じゃないんだろう。
ルーティンの乱れを愛華の背中から感じ取れないほど、2人は鈍感じゃない。
だから、「あいつらも私と詩織みたいに、顔見合わせているんだろうな…」ということが予測できた。
言いたいことは分かるけど、「愛華、何やってるの?」みたいな感じで私に投げられても困る。
私だって分からないんだから。
今の愛華の、“考えてること”って言うのが。
『はぁ…』
そこまで考えて、私は1つ溜息をついた。
“愛華の考えが分からない”。
いや…そうじゃないな。