第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
フリースローラインに立ち、2本目の投球を迎えようとしているうちのキャプテン。
制限時間が支配するその刹那。
愛華の中から、確かにこちらに顔を覗かせた“違和感”。
私からはしっかりと見えた。
隠れる気も、隠す気も微塵も見せなかったそれが。
意味を含んでいないわけがない。
『愛華…?』
あいつ…何やってんだ?
両の眼で愛華を捕らえていた私の意識を、ひとしきり奪っていった“違和感”。
その正体は、愛華の“ルーティン”の乱れだった。
「この作戦を頻繁にとる」と言うことは、「愛華がフリースローをする頻度」が必然的に高くなることを意味している。
だからこそ、愛華はフリースローの練習量は誰よりも多く確保している。
フリースローに限らず、スポーツのプレイスタイルには“手順”のようなものがあって、人はそれを“ルーティン”と言ったりする。
公式戦のプレッシャーに慣れるため。
もしくは、ルーティンによって、プレイに集中できる心理状態を作り出すことができるんだ。
その愛華のルーティンが、いま乱れている…
これで何もないわけがない。
そう思った時。
私の視線は、自然と愛華から外れ…
今度は、別のやつの“それ”と交じり合った。
たまたま同じタイミングで、私の顔色を伺いに来たであろう、その視線と…
それはまるで、突如として目の当たりにしてしまった、自分の中で解消しきれなかった蟠りを。
「たまたま同じ光景を見ていた、別の人物から答えをもらう」という近道を使うことで、解放されようと早まるかのように。
・・・
そいつは…
「ん??」
そう唸って、私の方に向かって首を傾げてきたのは。
ペイントエリアの真反対に立つ、詩織だ。