第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
愛華がフリースローを打つ際は、オフェンスメンバーとして、ペイントエリアの両側には私と詩織が立つことになっている。
そしてスリーポイントラインの外側には、紗恵と史奈。
当初の予定通り、配置に着こうと歩き始めた。
その横で…
?「あの…さっきはごめんなさい」
起き上がった愛華に、そう声をかけたのは…
愛華のシュートを止めようとして、結果ファウルを取ってしまった、相手チームのキャプテンだった。
?「ほんとは、
そんなつもりなかったんだけど…」
「えぇ、分かってますよ。
大丈夫です」
愛華を置き去りに、コート内に向かって歩きつつ。
私はキャプテン2人の会話に、聞き耳を立てた。
愛華は別として、聞きなれないもう一つの声からは、「本当に申し訳なくてしょうがない」と言う気持ちが汲み取れる。
自分に向かって頭を下げる相手チームのキャプテンを宥めながら。
愛華は…
「単なる、不運な事故ですから」
とだけ言った。
ちょっと前に、目の前にいる相手のせいで床をゴロゴロ転がった奴にしては。
随分と寛大な心を持っているな?
でも、その代わりとして、私たちはフリースローを獲得した。
少しばかり「貰いすぎなんじゃないか」って思ってしまうほどのチャンスを。
事実、試合終盤のフリースローは、「相手選手に邪魔されることなくシュートを打てる」という好条件も相まって、ゲームスコアに大きく影響を与える。
スポーツっていうものは、そうやって規制が整えられている。
ファウルやバイオレーション行為があった場合の…言わば、行為を受けた側に与えられる“見返り”ってものが。
だから、私たちも一選手として、スポーツマンシップに乗っ取ってバスケをプレイするのであれば。
その謝罪を聞き入れ、許してやるのが正しい。
それが、“行為を受けた側の選手”としての、礼儀とも取れるから。
何てったって、愛華の言う通り。
単なる、“不運な事故”だから。
単なる。
事故…
あれは、“事故”か?
本当に?