【ヒロアカ】change the truth【R18】
第5章 個性
「私、何も覚えていなくて、気づいたらここにいました」
明らかに何か隠しているのはわかる。いつもの俺なら、その嘘を察知した瞬間に取り押さえるはずだ。
なのに――口をついて出たのは、「嘘はついてなさそうだな」という言葉だった。
なんでだ……?
自分でも理解できない。胸の奥にうっすらと生じた違和感を拭えないまま、校門の外を見やる。今日に限って、マスコミが押し寄せている。こんな状況で騒ぎを起こすわけにはいかないと判断したのは、教師として当然の思考。
だが、それにしてもいつもの自分なら――。
「一旦、校長に指示を仰ぐ。ついてこい」
そう言って歩き始める。背後からついてくる足音は頼りなさげで、どこか不安そうだ。気づくと、俺は自然に歩調を落としていた。まるで、こいつを置いていくわけにはいかないと言わんばかりに。
何をやってるんだ、俺は……
薄暗い廊下を抜けるたびに、胸の奥にどんよりと淀んだ感覚が広がる。校長室までの道のりが、いつもよりやけに遠く感じられた。
こいつを校長に引き合わせた後、どんな処置をとるつもりだ? 警察を呼ぶのか、どこか別の場所に移送するのか。そう考えながらも、なぜか「手放したくない」という奇妙な感情が微かに芽生えている。