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君と悪循環を抜けるために私にできること

第7章 闇医者の不養生


霞む視界の端ですっかち見慣れた女がカルテを捲っている。
「……」
『アレックス、目が覚めたか』
顔を上げたは手際よくアレックスの額の保冷剤を替えて首に手を当てた。
『熱は三十七度四分まで下がったが今日一日は安静にするべきだ』
時計を見ると五時を過ぎている。朝から記憶が曖昧だ。半日寝ていたのか。
「先程来たのは……ドニとブレイクか」
『そうだ。正午頃だが私の体の情報……奇しくも愛鳴會がヒトを培養していたデータや野狗子の幼体のデータが集まったからな』
ついでに昼食を摂ってもらったという言葉にアレックスの眉間に皺が寄った。
急に思考がクリアになる。
「お前の食事を出したのか」
『ああ、トゥリから教わったものだし、君が黙って食べているから問題ないと思ったのだが……二人も悪くないと』
「もういい」
アレックスは自身が何に苛立っているのか気づいていないし、夜梟にはまだ複雑な感情は理解できない。
『空腹なのだろう。君用に滑粥を作ってある』
「……もらってやる」
のそのそと起き上がると夜梟は満足そうだ。
『君が不調なのは心配だが、食事に積極的の上に名前も呼ばれるとは嬉しいな』
「……名前を?」
口を押さえてももう遅い。呼んだ記憶は……曖昧だ。
アレックスは己の不養生を心から悔いた。
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