第1章 それでも君は、【太宰治】
愛を確かめるように、
深く深くキスをする。
そんな事しなくても、
愛していると言われたのだ。
だが、
まだ足りない。
「んっ、んぅ…はぁ、ぁっ」
一体何処で喘ぎ方など知ったのか、
耳にこびりつく声がどんどん甘くなっていく。
そうさせているのは、
他でもない私であると、
自分に#NANE1#に言い聞かせているようだ。
あまりに長く口を塞いでいたために、
宵朝は涙を目尻に浮かべ、
私の胸板を遠慮なく叩いた。
「はぁ、すまない。止まれなくなるね」
「んぅ…はっはぁ…はぁ…」
宵朝の口元からはだらしなく唾液が溢れ、
目に浮かべていた涙も、
ついに決壊し頬を濡らす。
それらすべてが美しくて息を呑んだ。
蕩け切った顔で、
肩で呼吸をして、
必死に私に縋り付いている。
「んぅ…だ、ざい…」
「…ふぅ、うん。何だい?」
「あ、いや…その、」
意識が正常に戻ってきたのであろう、
先程よりも瞳がはっきりとしている。
その瞳を逸らし、
俯いた宵朝は告白するかのように、
口をはくはくとさせている。
「何か、あるのかい?」
「いや、えっと…引かないでくれる?」
キスの余韻が抜けた宵朝は、
薄闇でも分かるほど頬を染める。
「コートが、その…胸に触れて…」
「…」
「なんか変だから、脱いでもいい…?」
「…」
「な、何か言ってよ」
何も言えるわけがなかった。
他でもない自分が宵朝を犯すと、
言い聞かせていたはずなのに、
実態として快感を得ていることを、
其れを引き出したのが自分であると、
知って、
どうしたら黙らないで居られる。
崩れそうな心臓を軽く抑え、
宵朝に不安を与えぬよう言葉を探す。
だが、
見つけた言葉は醜い欲だった。
「宵朝、矢張り脱がないで欲しい」
「え、何で…」
浅はかで邪な考え。
だなんて、
言っても宵朝は許してくれるだろうが、
言わないままに宵朝の頬を撫でる。
「宵朝」
「…なに?」
「宵朝は…自慰をした事も無い、で合っているかな?」
こんな下賤な事を聞きたくは無いが、
聞かぬ事には先には進めない。