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真っ直ぐに歪んで【文スト/短編集】

第1章 それでも君は、【太宰治】


宵朝の言葉に簡単に絆されてしまった。


全く、
阿呆で単純な脳みそだ。


軽く繋いだままの手に力を込めて、
テーブル越しの宵朝を引き寄せる。


「わっ危ないよ。」

「すまないね。でも、もう待つなんて出来っこないんだ」


ローテーブルに手をついて乗り出した宵朝、
その反対の繋いだ手に唇を落とす。


分かりやすく小さな手が震える。


このままローテーブルに宵朝を乗せて、
明るい中でその姿を目に焼き付けたかった。


だが、
宵朝は今夜が初体験なのだ。



せめて美しいとは言えない日々に、
美しい初夜を残してやりたい。


今、
まだ理性が効いているうちに、
ベッドまで移動しておいた方がいいだろう。


「宵朝、寒くはないかい?」

「ん?うん。大丈夫だけど」


その言葉だけ聞いて、
手を繋いだままベッドへ歩く。


大人しく腰掛けた宵朝を見届けてから、
照明を落とした。


「暗くない?明かり消すの?」

「全て見えてしまうよ?」

「…このままでいい」


本当に、
すべて、
分かっていないんだ。


その事に昂る。


ベッドにずかずかと入り、
枕に背をもたれる。


腰掛けていただけの宵朝は、
着いていくかのように太宰の前にちょこんと座った。


「ねぇ宵朝」

「うん」

「私はこれから、宵朝に酷いこともするんだ。」

「うん」

「それでも…いや、なんでも」

「それでも私は、太宰のことを愛しているよ」


少し恥じらっている、
今まで見せたことの無い顔だ。


愛おしさが溢れ、
頬に触れていた。


その手で唇に柔らかく触れると、
少し身を引こうとするので腰を抱く。


強く、
でも壊れ物を扱うように腰に手を添えると、
観念したかのように身を預けてくる。


そのいじらしい仕草も、
胸を突いて腹の底にじんわりと欲を溜めた。


柔らかい宵朝の唇に自信の唇を重ねる。



宵朝を細目で見やると、
大きな瞳をさらに大きく開いてから、
慌てて瞑った。


宵朝に行動を把握されないのをいいことに、
角度を変えて深く口付けると、
愛らしい声がもれた。


どこまでも、
宵朝は私を獣にしていくのだった。
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