第26章 事変
帳の外にいた救急隊員の人に新田ちゃんを預けながら、ずっと考えていた。
私だけが安全圏に身を寄せて待機をしている。
みんなの無事を祈りながら、ずっとずっとその帰りを待つ。
本当に?
本当にそれでいいの?
みんなが頑張っている中、あの子が頑張っている中、私だけが。
「―――いいわけがねぇんだよなぁ」
ぽつりと呟いた。
あの子の隣に立ちたい。
あの子と肩を並べられる存在でありたい。
口が悪くて強がってばっかで素直じゃなくて強くて優しくて泣き虫で弱い、あの子の側に―――。
「その人のこと、よろしくお願いします」
救急隊員の人に頭を下げて、私は新田ちゃんに背中を向けた。
新田ちゃんは私が何処に行くのかを瞬時に理解したらしく、引き留める言葉を投げるけど、ごめん。
その言葉は聞けない。
「アイツらが、が戦ってるのに、一人だけ帰るなんて私にはできない」
後悔したくない。
ここで帰ってもし万が一何かあったらと考えると。
仲間が死んで、そこに私がいなかったら。
これ以上の後悔はない。
待機していろって言われたから待機していただけ。
私は指示に従っただけ。
本当は助けに行きたかった、加勢しに行きたかった。
でも、仕方ないでしょ。
一級術師の七海さんにそう言われたんだから。
私はその指示に従ったまで。
なんて言い訳が通用すると思うなよ。
後悔の矛先を七海さんにしたくない。
もしここで私が死ぬようなことがあったとしても。
誰かのせいにして誰かを呪うような真似だけはしたくない。
大好きな人達を呪わないために、とまた会った時に胸を張って笑っていられるように。
私が私らしくあるために、私が私を好きでいられるために。
「私は"釘崎野薔薇"なんだよ」
眉を寄せて私を心配する新田ちゃんに、とびっきりの笑顔を向けて私は帳の中へと入った。