第26章 事変
電車のベルが大きく響いた。
野薔薇ちゃんの為だけの扉が開く。
ああ、これで本当に最後だ。
「じゃ!!二度とここには戻って来ねぇから!!ふみ!!アンタもその内この村出なさいよ!!」
何とも野薔薇ちゃんらしい言葉に、私はただ頷くことしかできなかった。
小学生の時からずっと一緒にいた野薔薇ちゃんは、いい笑顔で笑っている。
それが苦しかった。
私の時は泣かないんだ。
って、そんな最低なセリフがよぎったせいで、何も言えなかった。
私と沙織ちゃんは同じ余所者だったけど何もかもが違いすぎた。
こんな風に沙織ちゃんと比較して負い目を感じて。
これだとまるで村人の人たちと一緒じゃん。
そう思ったら、本当に苦しくなってしまった。
そんなどうしようもないこんな私に野薔薇ちゃんは静かに「ふみ」と私の名前を呼んだ。
俯いていた顔を上げると、野薔薇ちゃんはうっすらと涙を浮かべていて。
「次合う時は、三人で!!」
涙を零さないように必死に堪えながらそう宣言する彼女の涙声に、私の涙腺は壊れてしまって、大粒の涙を沢山零した。
そして、野薔薇ちゃんだけのために開いたドアに野薔薇ちゃんは足を踏み入れた。
何万歩よりも距離のある一歩。
私はそっちに行けないから。
手は振らなかった。
ただドア越しに二人で見つめ合って、ゆっくりと動き出す電車を見えなくなるまで見送って。
【次合う時は、三人で!!】
約束だよ、必ずだよ。
いつの日か絶対に会おうね。
見えなくなった電車を見送り改札を出れば、静かだった田舎町は少しだけ賑わい始める。
車の音や行きかう人達の声、沢山の音に耳に飛び込んできて。
まるで世界に一人だけみたいみたいだなぁと思った。