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【暇潰し】R18/Short Story【進撃】

第1章 Ⅰ*エルヴィン・スミス


会場に到着して、ハンジに案内をされるまま腰を掛けた席はピアノの真正面だった。

『ねぇ、ハンジ…伝手って……』
「ほら、はじまるよ」

舞台袖から現れた男性が、凛とした姿でピアノへと向かっている。
夢で見るよりも、少しだけ細身だ。

『少し…痩せたね』
「はは、鍛えなくて良いからね」

エルヴィンが椅子に浅く腰を下ろすと、鍵盤にゆっくりと指をのせた。
巨人の項を力強く削ぎ落とす彼の姿とは真逆で、しなやかで優雅で美しい。

「すまない、遅くなった」

とても懐かしい声だ。
隣の空いていた席に、リヴァイは腰を掛けた。

『リヴァイ…』
「あぁ、ドレスいいじゃねぇか。悪くない」
「遅かったじゃないか、リヴァイ」

リヴァイの手を握った。
夢でのリヴァイはいつも辛い顔をしていた。

『リヴァイ…辛い選択をさせてごめんね』

リヴァイは驚いた。
目に涙を溜めて、握られた手は震えている。
言葉の意味をすぐに理解しする。

「あぁ…、もう大丈夫だ。心配はいらない。お前…化粧がはがれるぞ…」
「あぁぁ…こっち向いて」

ハンジはメイクが崩れないようにの目元を優しく拭った。

『ハンジ…連れてきてくれてありがとう。ハンジがいてリヴァイがいて、私とても幸せ』
「おいよ…」
「2人とも、ピアノ聴こうよ…」

両隣に感じる存在に、安心感を覚える。
舞台の上では、愛した人が美しい音色を響かせている。
これほどに幸福な思いは、きっと生まれてはじめてだ。

『ありがとう…』

誰にも聞こえない声で呟く。
そして、最愛の人に心の中で別れを告げた。
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