第4章 VI * アルミン・アルレルト
「貴方、見慣れない服を着ているね。何故こんな所にいるの?馬は逃げちゃったの?どうやって木に登ったの?」
目の前に飛んできた女性が、矢継ぎ早に問いかけてくる。
『…気づいたらここに』
余計な事は話さず端的に伝えた。
女性は腑に落ちない様子で続けた。
「質問を変えようか。どこから来たの?」
『…日本…、東京都北区田端…』
「…それは何?」
『地名です』
伝わらないのも想定内だった。
女性は観察するようにの周りをぐるりと回った。
「これは煙弾かな?」
いまだ握りしめたままのロケット花火を指差していた。
『えっと…ロケット花火です』
「ロケットってなに?…初めて聞く言葉だよ」
「分隊長!」
男性が目の前に飛んできた。
謎の機械の原理は少しだけ理解した。
巻き込み式のワイヤーの先端に鋭利な物がついていて、それを樹に射して飛んでいるようだった。
「分隊長、急ぎましょう。撤退指示です」
「わかったよ。貴方、私達と来るかい?悪いようには………ならないと思うよ」
"間"が気になるものの、ここに置いていかれるのはご免だ。
連れて行ってくれるなら、3回まわってワンでも何でもする。
『はい、助けてください!!』
「うん、行こうか」
はビジネスバッグとエコバッグを手に持つ。
「モブリット」
「お預かりします」
『ありがとうございます』
荷物をモブリットと呼ばれる男性に手渡すと、分隊長に腰を抱えられた。
「しっかり掴まっててね」
『はい』
分隊長の首に腕を回して、しっかりと抱きついた。
腰を支える腕がとても力強く感じる。
キュルキュルと音を立てながら、ゆっくりと樹の枝から降りて地に足を着けた。
「貴方はここね」
『はい、ありがとうございます』
馬に付けられた荷車に乗せられて、大きな木の森…ファンタジー的に言えば大樹の森を後にした。