第3章 気に食わない子
2月9日_オフ
小荒井「鳩原ー!昨日の試合のログ見たか?!」
作戦室の扉を勢いよく開けて登場しそう言ったコアラに視線を向ければ、後ろに申し訳なさそうな奥寺を発見した。
『昨日って、私たちも試合だったでしょ。中位の試合のことなら見てない』
小荒井「じゃあ見た方がいいって!次の対戦相手の玉狛第二にさ、すげーやつらがいるんだよ!」
コアラはそう言うと机の上のものを無理やり退かし、目の前にノートパソコンを設置する。
『…見ての通り課題やってたんだけど……奥寺、何とかしてよこの人』
奥寺「ごめんごめん。でも見た方がいいのは確実だから」
『あんたがそこまで言うなら…』
私が了承すれば、コアラは「やりぃー!」と言いながらログの再生をする。それは昨日の昼の部の試合で、那須隊、鈴鳴第一、玉狛第二のメンバーが映し出された。
…
ログの再生が終わり、モニターから視線を外せば興奮したようなコアラがモニターを指差しながら話し始める。
小荒井「な?な?凄かったろ?!特にこの2人!白いのは村上先輩に勝っちゃうし、こっちの子は狙撃の威力半端ないし!」
コアラの言葉を聴きながら頭に先程のログを浮かべる。
『確かに凄かったけど、なんか気に入らない』
奥寺「気に入らない?」
『あの女の子、人撃てないでしょ』
小荒井「え?!そうなの?」
奥寺「いや、俺は分からないけど…」
『だって、橋落とせるくらいの威力の狙撃ができるなんてトリオンすごい証拠でしょ?わざわざ橋とか建物狙わずに普通に狙ったら二宮さんの集中シールドでも割られるんじゃない?そんなの勝つだけならあの子が撃つだけでいいじゃん』
小荒井「確かに…!」
『……ほんと、思い出すほど似てて…気に入らない』
奥寺「どうした?」
『なんでもない!』
イライラする気持ちを抑えて、ノートパソコンをコアラに突き返し課題を再開する。
奥寺「とりあえず、玉狛のログはあるだけ置いてくから時間ある時に見ろよ」
『気が向いたらね』
ランク戦ブースに向かうであろう2人を見送り、次のスケジュールを確認する。
((次は15日の夜…二宮隊と影浦隊もだったっけ…))
ペンを握る力が強くなったことに気付かぬふりをして課題に思考をシフトチェンジする。それでも脳裏に玉狛の狙撃手がチラつくのは全部姉のせいだ。