第2章 閉じ込められた生活
その夜。
扉が開く音がして、私ははっと身を固くする。部屋に漂う空気が一瞬で変わった。直哉くんが帰ってきた。
「桜潤ちゃん、今日は何してたん?」
低く落ち着いた声。けれどその裏には、どこか棘のようなものを感じた。私は微かに首を振る。
「別に、何も……。」
「ふぅん? なんか、ええ匂いせぇへんか?外の空気みたいな。」
直哉くんが私の髪に触れる。彼の指は優しいけれど、その視線はどこか疑うようで鋭かった。
「……誰か来たんか?」
心臓が跳ねた。
言葉が出てこない。けれど、直哉さんの目はすでに何かを悟っているようだった。
「桜潤は酷くされるのが好きなんやなぁ」
囁くような声でそう言って、直哉くんは私の顎を掴み目を無理やり合わせるようにした。
息が詰まりそうになる。
「ご、ごめんなさい…」
「何がなん?はっきりその口使って話せや。桜潤」
直哉くんは顎から手を離すと私の首を掴みジワジワと締めながら言った。
「と、とうじさんっと…話…ました…ん…ぅ…」
私の顔はどれだけ悲惨だっただろう。赤くなり苦しさに悶えて必死に声を出して目の焦点を必死に合わせて。
それに対して直哉くんは冷たい表情のまま聞いているが「甚爾」の名前を聞いた瞬間一瞬顔を歪ませた。