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~たゆたううたかた~【禪院直哉/R-18/短編集】

第1章 気まぐれ 【禪院直哉】



希望する曜日は無いのかと
そんな風に言われて、
別に…何曜日でも…と答えて置いた。

そして……日常的に繰り返される
お役目を果たした翌日の
マウントの取り合いみたいなのが
お稽古の時間に繰り広げられるが。

私は別に…そんな…絶対
直哉様の妻になろうと言う
野心はそこまで無いので。
そんなのは…どうでも良くて
黙々とお稽古に…取り組んでたんだけど。

『自分は…そう言う
野心とかないんかいな?』

先程の…女同士のやり取りを
直哉様に聞かれていた様で。
一人になった所に声を掛けられた。

『俺に…媚とかんでええの?
そう言う作戦…って訳でも無さそうやなぁ』

「別に…私は…そこまでは…」

弥生さんに比べると
おっぱいは控え目だし。
千夏さんに比べると
愛嬌と言うか…笑顔もない。
澪さんに比べると
容姿が際立ってるとは言い難い。

『謙虚なんか、自分に自信が無いんか
それとも…あれや、欲ちゅーもんが無いんか。
女は愛嬌…言うけど、この家で
やってこう思たらなぁ…。
愛嬌で渡れるような家ちゃうねんで?』

そう…忠告の様に言われる言葉も
私にはどうでも良かった。
この人が私を要らないと判断すれば、
私はもう…この役目から
逃れて普通の生活を送れるのだから。

『まぁ…ええけどな…、
そない…簡単に…許してなんか
貰えへん…ねん、世の中なんてな。
俺がアンタをん事要らん言うた所で、
適当な炳の若いのんに、
宛がわれるだけやで?自分』

この人の相手…よりも…
そっちの方がマシな気がする…。
と…ちょっと…思ってしまいつつ。

「そうでしょうね…」

『どうでもええんかいな…、
自分の事なんちゃうんかいな…』

そうは言われても
正直どうでもいい。
自分が惚れた相手と
結ばれる世界線が…存在しない
敷かれたレールの上を走る。

それかしない人生なら。

どうでもいい。

「直哉様は……よろしいのですか?」

『せやから…俺は、結婚なんか
しやへんでってパパに言うたんやって。
ほんなら…こないな事しよってからに』

敷かれたレール…の上を
走らされてるのは…、
禪院家の女に生まれたから…
と言う訳でも…無さそうだ。

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