第24章 春高一次予選開始!
月島 side
目の前に残された女子は、鈴木を追って走り去る影山を見て爪を噛んでいた。
「あなたが美里ちゃんの約束の相手?」
突然、清水先輩がその女子に話しかけた。
そういえば約束がどうこう言ってたっけ。あの瞬間の鈴木はひどく傷付いた顔をしていたけれど、約束って一体どんな内容だったのだろう。
「…美里が話したんですか?誰にも言うなって言ったのに。もしかして約束の内容、飛雄にも話してたりして…」
「話してるわけない!…話せるわけがない」
清水先輩は怒りのこもった声でそう言った。
「…美里ちゃんは、あなたと約束をしたその日からきっとずっと苦しんでる。あの約束は、美里ちゃんにとっての呪いだよ」
「………」
「もうこれ以上、美里ちゃんの心を縛らないで」
キッと清水先輩を睨みつけた女子は、ため息をついて背を向けた。そして軽く振り返りこう言った。
「もしこの中に美里のことを狙ってる人がいたら、早いところ捕まえて、そして二度と離さないでください。お願いします」
「………」
その目は、まっすぐに僕を見ていた。
歩き出したその姿を、他のメンバーは放心状態で見ていた。
「……なんだアレ?スゲー変なヤツだったな」
「影山と鈴木の小学校の同級生、だよな?」
「あの子影山のことが好きなんですよね!?くっそ、モテ山めぇ…!」
「翔陽、焦るな!お前のモテ期はきっとこれからだ!」
「ぅえっ!?モテ期!?おれにも!?」
「清水、あの女子のこと鈴木から何か聞いてたのか?」
「あの子のことってわけじゃないけど、ちょっとね」
「結構ヤバそうなヤツだったじゃん」
「うん…」
「あの2人、大丈夫かな?」
「美里ちゃんのことはきっと影山が守るから平気。でも、長く拗れた心って簡単には解けないと思うから…そこが心配」
「…清水?」
2人が他人のフリをして関係性を隠したり、外で名前を呼び合わなくなったきっかけはきっとあの女子だ。
それと、僕はようやく確信した。
影山が、鈴木を幼なじみ以上に想っているということを。