第23章 止まり木
モグモグと口いっぱいに頬張って食べるみんなに、私は口角が上がるのを抑えられなくなる。やっぱり、食べることを楽しんでいる姿って見ているだけでワクワクするなぁ。
「美里ちゃん、どうしたの?」
『なんだか嬉しくて』
「嬉しい?」
『みんな美味しそうに食べてて…見てるだけで幸せな気持ちになります!』
「ふふ、たしかに」
『はい!』
飲み物を用意したり食材を追加したり…マネージャー陣は大忙しだった。でもそれも最初だけで、途中からは選手側のみなさんが率先してやってくれるようになった。
お皿を片手に遠目からみんなのことを見ていると、直井さんに声を掛けられた。
「やぁ、食べてるかい?」
『直井さん、お疲れ様です!はい、これからお肉をいただこうかと』
「おい、この子の肉!」
「「はっ!!」」
ビシッと敬礼ポーズを決めたリエーフくんと芝山くんに私は戸惑った。
『えっ…えぇ!?』
「いいんだ、ヤツらの大事な使命だろうから」
『ありがとうございます…?』
「直井ぃ、鈴木は高1だぞ〜忘れんな」
「は!?当たり前だろ、烏養バカ」
「へッ」
「そういや、鈴木さんやっぱりバレー経験者だったんだな」
『え?』
「いや、仙台での練習試合のとき烏養に言われたんだよ “鈴木が経験者か見極めてくれ” って」
「あー…あったな、そんなことも」
『そうだったんですか?』
「合宿中に、お前がすげえサーブ打ってんの見ちまって…そっから気になっててよ」
「それが今やテーピング、分析、審判、練習参加?…とんでもねえ逸材だわ」
「だろ?自慢のマネージャーなんだよ」
『ちょ、コーチやめてくださいよ!』
「まあ、そうだろうなァ…どうだ、東京くる気になったか?」
『ははっ、猫又監督はお会いする度にそう言ってくださいますね!光栄です』
「俺ァ、本気だぞ?」
「猫又監督…勘弁してください」
「ハッハッハ!」
少しして、遠くからリエーフくんに名前を呼ばれた。
『じゃあ、失礼します』
「うん、楽しんでってな」
『どうもありがとうございます!』
私は頭を下げてからその場を離れた。