第23章 止まり木
『ええっ!?』
思わず大きな声を上げてしまった私は、急いで口を手で隠す。
みんなの視線が私に注がれた。
「なになに鈴木さ〜ん?」
「えっ、もしかして鈴木さんも9番くんだった!?」
『ちっ、違いますよ!まさか同じ学校の同級生が挙がると思わなくて驚いただけで…!』
「ホントかなぁ〜?」
『本当です!ね、仁花ちゃん!』
「え、あ゙っ…ウン!びっくりした!」
仁花ちゃんを巻き込んだ私を見て、潔子先輩は楽しそうに笑っていた。
「でも、たしかに9番くんわかるかも」
「でしょー!?顔整ってるし、オーラある感じで!」
「天才セッターだって梟谷のメンバーが騒いでたよ、あの子1年生なんでしょ?」
「うん、森然でも話題になってた!すごさが素人にも伝わるよね」
べ…べた褒めじゃん!飛雄のヤツ、いつの間に他校の女子の話題にまで上がるようになったんだ!
「あと練習中はキリッとしてるのに、夕飯の時は疲れてるのかポヤポヤしててさ〜!ギャップ萌えかも」
「わかる、あれ可愛いよね!」
飛雄にギャップ萌え…!?生まれてこの方、そんなこと考えたこともなかった。もしかしたら、みんなには私の知らない飛雄が見えているのだろうか。
…私の知らない飛雄と言えば、一昨日の夜の飛雄は少し様子がおかしかった気がする。
──「…お前、もう赤葦さんのこと見んな」
どれだけ瞳を覗いても考えていることは分からなかったし、あの言葉の意味も結局分からないままだ。
それなのに、あの飛雄の目や言葉にドキッとした自分がいた。
…私も飛雄も、一体どうしちゃったんだろう。
「鈴木さんは誰がカッコイイと思う?」
『えっ!?』
まずい、余計なことを考えていたばかりに振られた時の答えを準備していなかった…!
『えー……えっと、』
── 「そんなもんッ、プライド以外に何が要るんだ!!」
『………山口くん、ですかね?』
「「えっ!?」」
烏野の2人が一番驚いていることに、他校のみんなは手を叩いて笑っていた。その後、“山口くん” は何番でどういう子なのかを根掘り葉掘り聞かれた。私はしどろもどろに答えながら心の中で土下座した。
…山口くん、本当にごめん!