第22章 初めての東京遠征
影山 side
「──で、なに?まぁどうせお前のことだからバレーのことなんだろうけどさ」
「…はい」
俺はぐちゃぐちゃに乱された心を必死に抑えながら、日向のことを話した。
正直、及川さんの言葉の意味は分かるようで分からない。日向はこの速攻でこれまでに数え切れないほどの得点を稼いできた。だから、日向は迷わずにその最強の武器を磨いていけばいい。あの時止められたのは、俺のトスが完全に読まれたことが原因だ。それは自分で痛いほどにわかっている。
大会直前の今、やるべきことはチームを最高の状態に持っていくこと。新しいことを始めてこれまでの努力を無に帰すことではない。
…それが正しいと思っていたのに。
「現状がベストだと思い込んで守りに入るとは随分ビビりだね?…勘違いするな、攻撃の主導権を握っているのはお前じゃなくチビちゃんだ。それを理解できないならお前は独裁の王様に逆戻りだね」
「…………」
“独裁の王様” この言葉が傷を抉る。
俯く俺に及川さんは両手をパチンと合わせて「バレーの話はもうおしまい」と言った。
「それより飛雄…お前まだピッピちゃんとキスしてないの?なんで?もしかしてトビオちゃんはそっちもビビりなんですか?!」
「は?」
「はじゃないよ、とぼけちゃってムカつくね!付き合ったんでしょ、ピッピちゃんと!」
「違いますけど」
「なっ………えっ!?」
及川さんは手本のような二度見をした。