第22章 初めての東京遠征
『え?』
飛雄の影からヒョコっと顔を覗かせると、目の前にいたのは青葉城西の及川さんだった。
『お、及川さん!?』
「あーッ!ピッピちゃん!?」
『こんにちは…』
「ちょっと飛雄…いつの間に!?先輩に報告なしってどういうことなの!?」
「お、及川さん何してるんスか」
「はあ!?…甥っ子の付き添いだよ」
「オス!」
元気よく手を挙げたその子に飛雄は思わず「オス」と返事をしていた。
「部活は?」
「ウチは基本月曜はオフなの」
「しゅ、週1で休みが!?もったいない…!」
「休息とサボりは違うんだよ」
「おっ、及川さんあの!」
「嫌だね!バーカバーカ!」
あっかんべーと小馬鹿にした及川さんに、飛雄はバッと頭を下げた。
『「!」』
「…お願いします、話を聞いてください」
「なーんでわざわざ敵の話聞いてやんなきゃいけないのさ」
くるりと身を翻し、階段を降りていく及川さん。
「お願いします…お願いします!」
頭を下げたまま何度もそう繰り返す飛雄を無視して及川さんたちは歩いていく。飛雄がここまでするなんて、よっぽど行き詰まっていたんだ。
『……影山くん』
すると2人を追いかけるようにダッと走り出した飛雄は、及川さんたちを追い越して階段の踊り場で勢いよくシュバーッと頭を下げた。頭を下げているようで目はしっかりと及川さんを見ている。物凄い眼力だ。
「お、ねがいしァァァァアアアス!!」
「わぁあああっ!?」
頭を下げる飛雄を見やった及川さんは、真面目な顔をしてスマホを取り出した。
「…猛、写真撮って。こう持ってここ押して」
「?」
「飛雄動くな」
そして及川さんはカメラに向かってピースをした。
「飛雄、及川さんに頭が上がらないの図!」
カシャッ
満足気な及川さんにひどく呆れた顔の飛雄。
「徹、こんな写真が嬉しいのか?ダッセー!」
「はっうぐう!?……で、俺に話聞けって?聞いて欲しいなら相応のお礼を用意しなよ!」
「…相応のお礼って、例えば?」
「うーんそうだなぁ」
及川さんは悩む仕草をしてから、ニヤッと笑って私のことを指さした。
「ピッピちゃんのキス、とか」