第21章 影に隠した秘密
『えっ?』
そう言われて改めて自分の体勢を見てみると、私は飛雄のお腹の辺りに跨って手を握っていた。
『う、うわあっ!?』
「ぐえっ…」
私は飛雄の体から飛び退いた。
「……着衣騎じょ」
「黙れ!」
何かを言いかけた田中先輩は縁下先輩にスパァンと頭を叩かれた。
しんと静まり返る廊下、誰もが誰かの言葉を待っていた。
「おい」
その静寂を破ったのは背中を擦りながら体を起こした飛雄だった。
「多分もう隠せねえぞ」
わかってる、そんなのさすがに私にだってわかってる。ドアを開けてみんなと顔を合わせてしまったあの瞬間に “終わった” と思った。
『わかってる…わかってるけど』
怖い。
みんなにどう思われるのか、
みんなに受け入れてもらえるのか、
みんなの態度が変わってしまったら
みんなに嫌われるのが
……とてつもなく怖い。
「ねえ、言うなら早く言えば?」
『!』
「…ツッキー?」
「別にキミらがどんな隠し事してようがどうでもいいんだから」
『………』
ツッキーの冷たい目に私は少し怯む。だけどツッキーはそれをお構い無しに私の目を見つめて言葉を続けた。
「ホント心底どうでもいい、同じ部内で隠れてコソコソと付き合ったなら最後までバレずに隠し通しなよ。結局こんな風にバレてそんな顔してさ…王様も鈴木も詰めが甘すぎるんじゃないの?」
……え?
「まあまあ月島、そう言ってやるなよ。こういうのはなかなか報告しにくいだろうしな…」
「いや大地さん!そうかもしれねっスけど、コイツらが今まで裏でコソコソイチャイチャしてたのかと思うと、俺は実に羨ましくて腹立たしいッス!」
「その通りだぜ龍!影山チクショウ、リア充め!」
「マジかぁー!鈴木さんが彼女とか影山め!!なんて羨ましいぐぬぬぬ…!」
私と飛雄はキョトンとして顔を見合わせた。