第21章 影に隠した秘密
しばらくして遅れて部室に飛び込んできた飛雄は、顔にワイシャツの跡がくっきりと残っていた。それを菅原先輩に問い詰められて、終礼の時にウッカリ寝てしまっただけだと必死に主張していたが、真相は闇の中である。
ちなみに私とツッキーと山口くんはさっきの出来事を思い出してしまいケラケラと笑った、飛雄はそれを不思議そうに見ていたが、私の前に座るとカバンから筆記用具を取り出して勉強の準備を始めていた。
私たちは椅子を机代わりに勉強していた。
『あれ、日向くんのノート綺麗だね!』
「でしょ!?谷地さんに教わったんだ!」
『今日谷地さんは?』
「都合悪いんだって」
『そっかぁ、残念』
「ねぇ俺、鈴木さんのノート見たい!」
『え?』
「あ、俺も見てみたいかも」
1年の4人がパッと私を見た。
私は椅子を退かして目の前に英語と数学のノートを並べた。
『はい、どうぞ』
「わぁー!…ん?これ全教科分?」
『ううん、英語と数学だけだよ』
「えっ、何でこんなにたくさんノートがあるの?」
日向くんの言うように、私の目の前にはそれぞれ4冊ずつのノート、合計8冊が並んでいた。
『これが板書用でこれが授業中に先生の言ってたことをまとめる復習用、これが教科書とか問題集を解く用で、これがテスト問題を書き留めておく用』
4人は顔を見合せて意味がわからないというような反応を見せた。そしてそれぞれ手に取ってパラパラと捲った。
『あっ…やだ、今引いたでしょ』
「引いてない、やっぱ鈴木さんすげえーって思った!だから頭良いんだな」
「日向、鈴木はこれやってるから頭が良いんじゃなくて頭が良いからこれが出来るんだと思うよ」
「…ん?」
「まあ、バカにはわかんないだろうね」
「なんだと月島ーッ!」
「ん?どうしたの王様、じっくり見ちゃって」
「鈴木さん、字綺麗なんだな」
『え、そうかな?』
私の字なんて見慣れてると思っていたのに、突然そんなことを言い出す飛雄に驚いてしまった。
「たしかに鈴木の字って先生みたいだよね」
『そんなことないよ、てかツッキーも字綺麗じゃん』
「…そりゃまぁ、この人たちに比べたら」
「「んだとコラァ!」」
すると、澤村先輩がパンパンと手を叩いて注目と声をかけた。