第20章 されど空の青さを知る
谷地 side
最後の練習が終わって、先生の元に集まった。
「えー明日ですが、急遽、扇西高校から練習試合の申し入れがありましたのでお受けしました。IH予選を見て是非とのことでした」
「──青城に負けた悔しさも苦さも忘れるな、でも “負ける感覚” だけは要らねえ、とっとと払拭して来い!」
「「「オオオォ!」」」
練習試合か…!
『谷地さん』
「ふぁっ!?…鈴木美里、さん!」
鈴木さんに声をかけられ、咄嗟にそう言うとみんなに笑われてしまった。
「っははは!フルネーム!」
「1年では “鈴木美里” なのかな?」
「俺たちのとこは “1年の鈴木さん” だけどな」
『それ恥ずかしいんですよね、前に日向くんにも言ったんですけど3年の東峰さんっていうのと同じじゃないですか?』
「そうだけど、やっぱ鈴木は特別なんだべ」
『えぇ〜!そういうイジりですか』
「すっ、すみません!なんだか芸能人に会うような感覚で…!」
「あぁ、スダマサキ、ハシモトカンナ的な?」
「わかるぜ、俺も最初はそうだった」
「田中も西谷もガチガチで酷かったもんな」
『ほんとですよ…あれは酷いイジり方でした』
「だから悪かったって!それにイジりではなく男のサガだって説明したろ!」
『心の傷です』
「ス、スマン!!!!」
「鈴木さん…すごかったです」
『え?』
「格好良かったです!」
『あ、いや…すごいのはみなさんで、私は全然』
「謙虚なところも素晴らしいです!」
『あっ……えと、』
「…てか、2人タメなんだから敬語とかなくてよくね?」
「えっ……」
そ、そんな!あの鈴木美里さんにタメ口なんてこの私めに出来るわけ…!
『谷地さん…私、谷地さんと仲良くなりたくて…いいかな?』
顔を赤くして私を見た鈴木さんの破壊力たるや。
「ヒィィイッ!?…はい!あっ、うん!?私でよければ!」
『よかった〜!谷地さん仲良くしてね!』
「チョットマッテ心臓ガ」
私は胸を押さえてしゃがみ込んだ。
見学初日だけど、濃ゆい1日だった。