第20章 されど空の青さを知る
2人が教室を出て行くのを案野さんと目で追っていた。
『………』
「鈴木さん、恋愛してみたいんだよね?」
『え?うん、したい』
「私はいいと思うけどな、影山くん」
『は!?』
「ははっ、鈴木さんのそういう顔見るの初めてかも」
『…だって案野さんが変なこと言うから』
「変なことじゃないよ!鈴木さん、彼氏作るんでしょ?出会いはどこに転がってるか分からないんだから!」
『そうかもしれないけど……』
「影山くん、背が高くて格好良いし、キリッとしたタイプで男らしくて良くない?結構そう言ってる人多いよ」
そうなの!?
『そ…それと恋愛は関係ないんじゃ』
「あるよ!そういうところから恋愛って始まるんだから!私、球技大会の時に思ったんだけど…影山くんって鈴木さんと接する時だけ自然っていうか、目つきが優しい気がするんだよね」
『それは、完全に気のせいだよ…!』
「そんなことないと思うんだけどなぁ、鈴木さん的に影山くんはナシ?」
『なっ、ないない!影山くんだけはない!』
「なにそれ、逆にちょっと特別じゃーん」
『違うってば!案野さん、もう勘弁して…!』
「ごめんごめん、いじめすぎちゃった…」
『だいぶいじめられた…』
「あはは!…あ、そうだ数学で分からないところがあるんだけど教えてもらえる?」
『え?うん、いいよ』
「ほんと?鈴木さん教えるの上手だから嬉しい!」
『いや…そんなことないんだけど…』
「上手だって!おかげでこの前の小テスト点数上がったもん!」
『えー、ほんと?』
「ほんとほんと!……ここなんだけど、」
『あ、これはねえ……』
私は次のチャイムが鳴るまで案野さんの前の席に座って数学を教えていた。どんなに難しい問題も数学なら公式を使えば解くことが出来るのに、どうして人は恋愛の公式を見つけられなかったんだろう。…まあ私の場合、その前に好きな人を見つけなくちゃいけないんだけど。
── 「私はいいと思うけどな、影山くん」
『!……ないないないない』
「鈴木さん?」
『あっ…なんでもない』
何にしても、飛雄だけは絶対にないな。