第19章 能ある烏は翼を隠す
『失礼しました』
国語科準備室の扉を閉めて、私はふぅとため息をついた。
珍しく朝練に顔を出した武田先生に「放課後に話したいことがある」と言われた私は、1日中気が気ではなかった。
何かやらかしたか…、そう思い返してすぐに昨日の球技大会が頭に浮かんだ。私はハッキリと口にしたんだった、“売られた喧嘩を私が買った” と。
怯えながら準備室に入った私に、武田先生は不思議そうな顔をしていた。そして、その後の先生の話は私の思っていたようなものではなかった。
──「鈴木さんの才能は、烏野の誇りです」
──「あなたの力が彼らをもっと強くするでしょう」
──「…鈴木さんにしか出来ない、鈴木さんだからこそ出来ることだと僕は思います」
「………私だからこそ、出来ること」
私はグッと拳を握り、部室へと歩き出す。
──「微笑んでくれますか、烏野の勝利の女神」