第16章 IH予選 初日
「…てことはこの先、お前は俺と同じ舞台にいるってことだな?」
学校に着いて部室付近へ行くと、飛雄の声が聞こえた。
「それが日本のテッペンでも “世界” でも」
……世界、
「あ、当たり前だっ!」
『………っ』
思わず日向くんの返答に足を止めた。しかし後ろから聞こえる微かな足音に私は再び歩き始める。
足早に部室からボールケースやドリンクボックスを取って集合場所へやってきた。
『おはようございます!』
「おー、鈴木おはよ!」
「鈴木さんおはよー!あ、これ持つよ」
『日向くん、ありがとう』
「………」
飛雄もそれと同タイミングで私の肩からボールケースを持ってくれた。
『ありがとう』
「おう」
「あと誰?清水ももうすぐ来るって」
「おーじゃあ俺ら側はもう揃ってるな」
「バスのところに移動するぞー!」
『はい!』
私たちは順番にバスに乗り込んだ。
座席前方、潔子先輩と隣。
『潔子先輩、よろしくお願いします!』
「うん、こちらこそ。頑張ろうね」
『はい!』
「おーし、じゃあ出発するぞー!!」
「「「おねシャース」」」
バスの車内にそれとなく緊張感が漂う。
この代になってから、初めての公式戦だ。
いつもの雰囲気と同じようでそうではない。
──全員が勝つ気でいる。
背後に広がるそのピリピリとした空気感が私には少し心地よく感じられた。