第15章 そして、走りだす
影山 side
いよいよインターハイ予選前日。
「─俺たちからは以上だ、今日はよく休めよ」
「「「ハイ!」」」
「よし!じゃあこれで……」
「あっ、ちょっと待って!もうひとつ良いかな?」
「「「?」」」
「マネージャーの2人から!」
俺たちが目をやると、並んだ美里と清水先輩が顔を見合せた。
「…激励とかそういうの、得意じゃないので…美里ちゃん」
『は、はい!』
美里はゴソゴソと紙袋からなにか大きなものを取り出して、ハシゴへと向かった。
「あぁっ、運ぶのは僕に任せて!」
『先生、ありがとうございます』
3人は2階へ上がると、何かを広げていた。
「じゃあいくよ?」
『「はい!」』
「せーのっ」
バサッ
俺たちの目に飛び込んできたのは、真っ黒な横断幕でそこには “飛べ” と書かれていた。
「こんなのあったんだ…!」
先輩たちも知らないってことは、相当前のやつか?それこそ、日向の好きな小さな巨人がいた頃とか。
「掃除してたら見つけたから、直したりきれいにした」
「うぉおお!燃えてきたァ!」
「さすが潔子さん良い仕事するッス!」
「鈴木さァーーん!!」
「「よっしゃああ!じゃあ気合い入れて…」」
「まだだ、たぶん…まだ終わってない」
澤村さんが小声で言うから、俺たちはまた上を見上げた。
「…が、」
が?
「がんばれ」
清水先輩はそう言って走り出した。
『あっ……』
取り残された美里がわたわたと慌てる。そして、こちらを見てスッと息を吸った。
『…私たちも一緒に戦います、ので…頑張ってください』
すると、先輩たちの目からぶわっと涙が溢れ出して、しばらく収拾がつかないほどの騒ぎになった。
「1回戦絶対勝つぞ!!」
「「「うおおおス!!」」」