第11章 烏野排球部恒例GW合宿
月島 side
「……はあ、っ」
コーチから部活終了の声が掛かって、汗を拭い時計を見上げると19:40だった。
いつもならこのあと家に帰って、ご飯を食べて、動画を見ながらお風呂に入って、音楽を聴きながら宿題をやって……寝るまでの時間をゆっくりと静かに過ごすことができるのに。
いつもと比べてマシだと思えるポイントが、宿題をしないということだけじゃないか。
「……やってらんないよ、ほんと」
いつも通り、全員が輪になってストレッチを行っていると日向が口を開いた。
「あれっ?月島、鈴木さんは?」
「なんで僕に聞くのさ、清水先輩もいないんだから食事の準備じゃないの」
「食事?……えっ!?鈴木さんが晩御飯作ってるの!?」
「鈴木がっていうか、マネージャーがでしょ」
「教室で言ってたもんね」
「お、そっか今年は鈴木もか!」
「田中さん!鈴木さんの手料理ですって!」
「おう!潔子さんの手料理でもあるぞ!」
「うおおおっ!すげえ、なんか罰当たりそう!」
「罰が当たってもいい、それでも俺は女神たちの手料理を選ぶぜ!」
「俺もーっ!!」
「まあ…その女神たちの手料理が、そもそもバチって可能性もあるけどね」
「てめえ月島ァ!今日は鈴木バリアねえからな!」
「ちょ、やめてくださいっ」
「おいそこ、ちゃんとストレッチしろよ」
「こんちくしょ!」
「いっ、た」
「鈴木さんって、料理上手いのかなあ?」
「まぁ上手かったらポイントが天井を突き破っちゃうよな」
「スガさん…ああいう女子は、たとえ料理が下手でもまたそこが可愛いじゃないスか!」
「おお〜!ノヤさん大人!」
「ナーッハッハッハ!そうだろう日向!」
「影山はどう思う!?」
「…なんでお前はいつも俺に振るんだよ」
「冷たい、そういうの良くない!」
「鬱陶しいな」
「なあ!だから、鈴木さんの手料理!」
「………上手いんじゃねえの?」
「やっぱり!?俺もそう思う!」
王様がこの手の話題で「知らない」とか「興味ない」以外の、しかも肯定的な言葉を放ったことが単純に意外だった。