第10章 東と西
キュッキュッ
バシンッ
「みんなー、お疲れ様!」
「集合ー!」
「「「「オース」」」」
「みんな、今年もやるんだよね!?GW合宿!」
「はい、まだまだ練習が足りないですから」
合宿!?…運動部っぽい!!
「それでね…GW最終日、練習試合組めました!」
「た、頼もしいな武ちゃん!どうしたっ」
「あ、相手は…!?」
「東京の古豪、“音駒高校”」
「東京?ねこま?」
「音駒ってあの…ずーっと烏野の因縁のライバルだったっていう?」
「うん確か通称、ネコ」
『ねこ…』
「俺らも話だけはよく聞いててよ、前の監督同士がずーっと昔からのライバルで前はよくお互いに遠征に行ってたんだと」
『そうなんですね』
「実力が近くて相性も良かったから、遠出する価値があるくらいの良い練習試合ができたって聞くよ。そんで、練習試合があると近所の人はみんな見に行ったらしいよ…名勝負!猫対烏!ゴミ捨て場の決戦!つって」
「それ本当に名勝負だったんですか」
「俺たちもいつか戦ってみたいってたまにみんなで話してたんだ」
「おお…!」
「でもしばらく接点がなかったのに、どうして今?」
「うん、詳しいことはまた後で話すけど、音駒高校っていう好敵手の存在を聞いて、どうしても“因縁の再戦”をやりたかったんだ…相手が音駒高校となれば、きっと彼も動くはず」
彼…?
みんなは合宿や音駒高校に意識が持っていかれていて、その部分を疑問に思ったのは私だけだった。
「よし!せっかくの練習試合 無駄にしないように、練習も合宿も気合い入れんぞ!」
「「「「オース!!」」」」
「東京かあ!シティボーイめェ!けちょんけちょんにしてやるぜえ!」
「シティボーイって」
「うるせえ月島てめえオラァ!」
「…鈴木バリア」
田中先輩を煽るだけ煽ると、ツッキーはいつも私を盾にする。
「月島ァ!もう鈴木バリアは効かねえっつってんだろ!」
「チッ…鈴木もっと頑張ってよ」
『無茶言わないでおくれよ…』
最初は話しかける度にコチコチと固まっていた田中先輩と西谷先輩も根気強く話かけ続けた結果、今ではすっかりと打ち解けることができた。