第9章 “特殊”な私たち
それから8年の月日が経って、
母たちが30歳の年、
またも偶然同時期の妊娠が発覚。
その妊娠を機に両家共に新しく一軒家を買うことにしたそうだ。
私の父、鷲平は一級建築士の資格を持ち、これまでにない新しいデザインの商業施設や病院、学校の建築を行うことで有名だった。そんな父は“斬新である”をテーマにたまたま隣同士であいていた土地を見付け、2軒を1軒に、所謂2世帯住宅の建築を提案。
それは夢のようだと二つ返事で決まったらしい。
家は基本的には同じ家が対になったつくり。影山家には父方の祖父である一与さんも住んでいたため、和室とバリアフリーが備わっていた。
父たちは毎夜のようにどちらかの家で晩酌をしていたこともあり、お互いの家のリビングには、行き来できる連絡ドアがあった。もちろんセキュリティもしっかりとしていて、一方が鍵を閉めれば開くことは無い。だが、その鍵が閉まっているところを私たちはこれまでに見たことがなかった。
そして新しく産まれてくる子どもたち、つまり私たちの部屋はとりわけ斬新な作りをしていた。