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【本音】(テニプリ 跡部)

第1章 1


「何すんだ」
「それは、こっちの台詞、だよっ!いきなり、こんなっ」
「…いきなりじゃなきゃ、いいのか」
「そうじゃなくて!跡部は、誰でもいいのかも知れないけど、私はっ」
「別に、誰でもいいわけじゃねぇよ」
「…え?」


跡部は悔し紛れに呟くように告げると、ゆっくりと身を起こし叶弥を解放する。
けれど、跡部からの思いもよらない一言に。
叶弥は倒れたまま、起き上がることが出来ないでいた。
跡部の言葉が、頭の中で繰り返される。
(どういうこと…?)
(跡部は、誰でもよくてしてたんじゃないの?)
(だったら、どうして…)


「跡部、さっきのはどういう、」
「叶弥、賭けは俺の負けだ」
「…え?」


漸く言葉を発した叶弥に、跡部は返答をするでもなく唐突に告げる。
その言葉の意味を掴みきれずにいると、再び跡部が口を開いた。


「賭けは、俺の負けだ。お前を堕とすはずが、どうやら俺の方が堕とされちまったらしい」
「跡部、」
「ったく、だから特定の女なんざ作りたくねぇんだよ。自分のコントロールすら出来なくなる」



跡部はそう告げて頭を抱える。
そこで初めて、跡部が自分に本気なのだと、分かった。
さっきのキスは、彼の本音がさせた行為。
ねぇ、跡部。そう信じて、いいの?



「その言葉、私は信じてもいいの?」
「アン?今更騙すもねぇだろ」
「そっか…なら、私も正直に話すよ。賭けはね、初めから私が負けてたの」
「なんだよ、それ」
「だからね。私は、とっくに跡部に堕ちてたんだよ」



叶弥はそう言って、へへっとはにかむ。
あの日、叶弥があの場に居合わせたのは、偶然ではなかった。
跡部が、葵に呼び出されたのを知って、いても立っても居られなくなって。
こっそりと、葵の後を付けたのだ。
葵が振られることを、願いながら。



「あの時、私はすでに跡部が好きだったの」



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