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【本音】(テニプリ 跡部)

第1章 1


「景吾は、私じゃなくてもいいの?」

放課後の校舎裏。
お決まりの台詞に跡部はくつりと嫌味に笑う。


「初めから言ってたはずだぜ?遊びでもいいなら、付き合ってやるってな」
「っ、でも!景吾も好きだって言ってくれたじゃない!」
「あぁ、好きだぜ?女なら、誰でも、な」


跡部の突き刺すようなその言葉と微笑に耐えかねたのか。
少女は手にしていた教科書を投げ付け、その場から走り去った。
今日はこれで3度目か。
ぎゃあぎゃあと煩くまくし立てて、最後は泣き出しそうな顔を向けて走り去る。
もう見飽きたな…
跡部は溜息を漏らすと、先程投げ付けられ足元に転がった教科書を拾い上げた。
何気無しに目にした先に、「稲瀬葵」の文字。
跡部にとって、その名も女自身にも興味は無かった。
そこにいるだけ、そんな存在でしかない。
ただ、その存在が疎ましくなる時は来るもので。
こうなったのは、女が執拗に跡部を束縛したがったからだ。
そしてそれは、跡部が何より嫌う行為でもあった。
(ったく…自惚れてんじゃねぇよ)
手にした教科書に苛立ちをぶつけるかのように、跡部はそれを二つに切り裂いて放り投げる。
と、そんな跡部の背後から「あ〜あ」と溜息にも似た声が上がった。
振り返れば、見知らぬ顔の女の姿。
怪訝な表情を浮かべた跡部は、一歩踏み出して口を開く。



「アン?見ない顔だな、誰だお前は」
「叶弥」
「叶弥?そうかよ、で、お前は何でここにいる。部外者は立ち入り禁止だぜ」
「部外者じゃないよ、叶弥はここの生徒だもん」


思い掛けない返答に、跡部は目を丸くする。
ここの生徒?それなら、俺が知らないはずがない。
ましてこいつは、今俺が連れているどの女より見目がいい。
そんな女を、知らないはずがない…。



「うちの生徒、ねぇ」


どこか楽しげな口調で告げる跡部には構うことなく、叶弥は不意に下へと指を指して見せた。
視線を向ければ、二つに割かれた教科書。

「ねぇ跡部くん。それ、叶弥の友達のなんだけど」
「あ?お前、なんで俺の名を知ってる?それに、葵の友達、だと?」
「もう、さっきから質問ばっかり」
「仕方ないだろ、俺はお前の事を知らないだからな」
「……。渋希叶弥、3年1組。葵とは幼馴染。跡部くんはテニスと女たらしで有名。以上」
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