第8章 恋仲になりまして
昼間なのに。
外なのに。
心臓が、壊れそうなくらい鳴る。
「これで…恋仲だと、わかるか?」
耳元で、低く囁かれる。
「……っ」
答えなんて、決まってる。
「……はい」
小さく頷く。
彼は「そうか」と満足そうに、息が揺れた。
「——だが」
すっと、距離が離れる。
「これは特別だ」
「え…?」
「毎度はせぬ」
「……っ」
思わず、唇を噛む。
すると、
「その顔だ」
小さく笑う気配。
「そうして、求めろ」
「……え?」
「そうすれば、応えてやる」
ずるい。
そんな言い方。
でも。
「……わかりました」
少しだけ、拗ねたまま答えると、
「素直でよろしい」
くすりと笑われた。
「今宵も、空けておけ」
「……っ」
それだけ言って、また何事もなかったように去っていく。
でも、さっきまでみたいに、不安じゃなかった。
「……もう」
小さく呟く。
「ほんとに、ずるい人…」
でも、私の声は、少しだけ嬉しそうに、彼の背中に向かっていた。