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一作目 吉川詩音

第1章 本編


僕の名前は、吉川詩音、
名門の男子校、城南学園高等部の二年生だ。
そんな僕には、朝比奈まふゆという恋人がいた。
ある日、学校の友達と会話をしていた。

「なぁ、この子が、詩音の恋人?」

「うん、そうだよ」

「へぇ~羨ましいな…恋人がいるって」

「う、うん…」

「それじゃあ、カワイイ恋人と遊んで来い!」

「あ、ありがとう…」

僕は待っている、まふゆに話しかけた。

「まふゆちゃん!」

「詩音くん!」

「今日も、学習塾に行くの?」

「うん、勉強のためにね」
 
「ふーん、熱心だね」

「詩音くんは、勉強しないの?」

「自宅で、ちゃんとやっているよ」
 
「詩音くんの方こそ、勉強熱心じゃないの?」

「うーん、どうだろ?
自分でも、あんまり、そう思わないな…」

「じゃあ、私 こっちから、行くから、
じゃあね、詩音くん」

「うん、またね、まふゆちゃん」

二人が恋人であることは、
周囲に秘密にしている、
優等生同士の恋は、非常に複雑で、繊細である。

僕と、まふゆが、出会ったのは、
幼稚園の時だった、同じ小学校だったが、
中学の時から、違う学校に通い始めていたが、
それでも、時々出会ってからは、
高校一年生の時に、付き合うようになったのだ。

そんな、日曜日の事だった。

僕とまふゆは、公園のベンチに座っていた。

「このクッキー美味しいね、
自分で作ったの?」

「うん、そうだよ、美味しい?」

「うん、美味しいよ!」

「詩音くんのためにクッキー焼いたけど、
詩音くん、私の作る、クッキー好きだもんね」

「うん」

 

詩音はアクアリウムに気づく。

「アクアリウム…キレイ…」

「何も入っていないけどね。
水と砂と草を入れただけで、
満足しているから」

「まぁ、インテリア的には、ありだね」

「フフ…ありがとう、詩音くん」

「あっ、そろそろ、時間だ!」

「もう、行くの?」

「友達と会う約束しているんだ」

「もしかして…私以外に、好きな人が出来たとか?」
 
「そんな訳ないだろ!
僕は、まふゆちゃんが好きだ!」

「ウフフ…ありがとう、詩音くん」

この時は、思いもしなかった、
彼女が、重い闇を抱えていることに、
気づくことさえ、出来なかった…
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