第2章 割の悪いアルバイト
『今からでも…遅くないですよ。
別に何歳までに結婚しないと、
死ぬわけでもないし』
そう慰めの様にして言われてしまったが。
「でも…相手が居ないと…出来ませんし…。
この年…になると…、若い頃みたいに
バーの隅で黙って飲んでるだけで、
声かけられたりしませんから」
『そんなに…気になるものなんですかね?
僕は…別に…何歳でも…ですけどね』
「流石に…36の女は…、
24の…港斗さんから
見ても……無い…でしょう?」
『そんな風に言って…、
何も無かった感じにされるのも。
それはそれで、…こっちも…今までのが
何も伝わって無かったのかなとかって、
思ってしまいそうですけどね…。
まぁ巴さんが
そう言われるのであれば…、
僕には僕で…考えがありますし…。
今は…これで…
全然良いですけどね、僕としては』
そんな話をしている内に、
出航の時間になって居た様で。
ゆっくりと…離岸して行くのを…。
デッキから2人で眺めていたのだが。
いつの間にか…距離がかなり近いし、
それに…こっちの…身体に
…腕を回されていて。
『巴さん…』
「は…い…」
名前を呼ばれてこっちが顔を上げると。
すぐ目の前に…港斗の整った顔があって。
キス…が…出来る…距離だ…と。
そんな風に…思ってしまって居て。
「そろそろ、風も出てきましたし。
船の中…に、も、戻りましょうか…」
そう言って、
巴が身体を反転させて、
港斗から距離を取ると。
展望デッキから、
船内に戻ろうと声を掛けた。