第2章 割の悪いアルバイト
トワイライトクルーズは
17時からなので、夕方から…
デートなのかなと思って居たのだけど。
その日は…
ジムの所まで10時に生田さんが
車で迎えに来てくれて。
生田さんの車の助手席に、
お邪魔をさせてもらって座った。
「生田さん、今日はお願いします」
『シートベルト、大丈夫ですか?
シート、好きに調整して貰っていいんで』
シートの位置とか、角度を
私の好みに調整しちゃったら。
他の女性を乗せる時に…、
あれ?ってならないのかしら…と。
そんな事を巴は内心考えながら。
自分が楽に座れるように
お言葉に甘えて調整させて貰って。
『大丈夫そうですか?
じゃあ、出発しますね』
まだ時間があるのでと…言って。
車で連れて行って貰った先は。
県立の美術館だった。
海沿いの埋め立て地に建っている、
全面ガラス張りの建物が
コの字に並んでいて。
そのコの字型に並んでいる
建物の中央には、印象的な
地下へと続く螺旋階段の様な
コンクリートの階段が下へと伸びている。
上からそのコンクリートの特徴的な
螺旋階段を巴が覗き込んでいると。
生田が巴の隣に立って、
同じ様にその階段を覗き込んでいて。
『この美術館の建物は、日本を代表する
建築家の安藤忠雄氏による物らしいですよ。
この円形テラスは…、この美術館の
言わばシンボル的な場所の様ですね』
「何と言うか…その…、この階段が
見たいなって思ってしまいまして…、
吸い寄せられてしまってました…。
こうして上から階段を見ていると、
アンモナイトの化石みたいですね…」
巴がその円形テラスと言う
コンクリートの打ちっぱなしの
特徴的な形をした階段をそう例えて。
『すいません。
もし良かったら、お写真お撮りしますよ』
そう、ここの職員の人に声を掛けられて。
じゃあお願いしますと、それぞれの
スマートフォンを預けて。
円形の階段の一番下の丸いスペースに
2人で並んで、写真を撮って貰った。