第105章 夫婦で迎える初めての朝
『巴が、港斗君と…
入籍したら渡そうとね、
ずっと思ってた物があったのよ…』
本当は…雄介君との
結婚式に役立てて貰えたらって
思って…渡すつもりで居たんだけど
雄介君とはあんな結果になっちゃったし。
渡すに渡せないままだったんだけど…って
話しながら、ごそごそと母は
自分のバックから何かを取り出して。
それを、テーブルの上に置いた。
私が成人した時に
お父さんと相談して、いつか
私が必要とする時の為にって
決めてた事だったんだけど…と。
そう言ってテーブルの上に
置かれた1冊の預金通帳を
母は…どこか遠い目をしながら
その…時の事を思い出しているみたいで。
『本当はね…お祖母ちゃんがね
母が、言い出した事だったのよ…。
巴ちゃんが…お嫁さんになる時に
自分が着たいドレスを着せてやって
お嫁さんに行かせてやりたいからって。
あの人は…自分の結婚式で
着たいドレス…着せて貰えなくて
あっちの家の…言いなりみたいに
選ばされたと言うか決められたって』
自分が…その時にした
嫌な思いを…して欲しくないって。
私の時もね、してくれてたんだけど…。
『元々は…全部…、巴
貴方のお金だから…遠慮しなくていい』
そう言いながら通帳の
ページを…母が開いて。
こっちに…それを見せて来て。
「もしかして…このお金って…」
『そう、貴方がずっと…
大学卒業してから、家に
生活費として入れてくれた分…』
「でも、それは…ずっと
私が…あの家で…卒業した後も
暮してたから…家賃みたいなもので…」
『でも、私も…母に
そうして貰ってたから。
そのお金でハワイで結婚式したんだしね』
使い方は全部、私に任せわねと
そう言って…それを
受け取らされるまま私に渡すと
そのまま…帰ってしまって。
「………受け取ってしまった…」
『いいじゃないですか、
巴さんのお母さんも
ああ言ってたんですし。そのお金は
ありがたくドレス代にしましょうよ。
うちの親からもLINE来てて、
フォトブック家に届くの
楽しみにしてるって言ってますよ』
あの画像を…待ち受けにしたと
そんな言葉も添えられていて。
どの画像??って思ったんだけど。