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こちら、MOB飼育係ver.ハロウィン[dzl]

第2章 彼らはハロウィンMOBであった──


「夜が来ないのは困るんだよぁ……僕が元気に動けないし」
 と言ったドズルバンパイアは、飼育カゴの影の下で少し疲れていそうに座り込んでいた。そこにすかさずぼんミイラがこう言った。
「だったら服くらい着なさいよね」
 そう、ドズルバンパイアは日の光に弱いわりには、上半身裸で赤パンツしか穿いていない少し変わった手乗りMOBであった。しかしドズルバンパイアははははっと笑い、太陽に克服するためだとよく分からないことを言う。
 そうして今日も彼ら五人の手乗りMOBたちは、売れ残りの商品棚の中で、雑談ばかりに花を咲かせていたのだが、それはいつか廃棄処分されるのではないかという不安を紛らわせるためでもあった。
 しかし、その日は違った。彼らを救う一人の人間の女性が、彼ら五人に近付いてきたのである。
「あの、すみません」
「いらっしゃい、姉ちゃん。今ならこの五人まとめてセットで安く売るよ〜?」
 その女性の声に応じて、店主がいつもの販売文句を言う。彼ら五人の手乗りMOBたちが、さんざん聞いてきた言葉だった。
 手乗りMOBたち五人は、あまり気にはしていなかった。彼らはいつも、怖いだの気味が悪いだのと言われ続けていたから、人間のことをあまり信じていなかったのだ。
 ところが、その女性だけは違った。
「五人でこんなに安いんですか?」
 聞き慣れない人間の言葉に、それぞれ五人のMOBたちは女性を見上げた。
 女性はよくいる人間の見た目をしていた。比較的大きな目で、少しウェーブがかった髪を短めに切っている人間の女性。
 店主があれこれと世話の説明をしている間も、女性は真剣そうに聞いて何度も頷いていたのを五人のMOBたちは戸惑いながら見守っていた。
 それから女性は、最後にはっきりとこう言い切ったのである。
「飼います」
 と。
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