第10章 おらふさんの守護霊の正体
「え、部屋中に?」
「はい。……虫の幽霊がたくさん」
「虫の幽霊?」
「あ〜、信じられないかもしれませんけど……」
「あ、ごめんごめん。でもまだ信じてなかったところもあって」とドズルさんは話続ける。「僕さ、虫の幽霊の話をしてる人と会ったことも見たこともないからさ」
「いやぁ、普通はそうですよね〜」
直後、私の視界の端で何かが蠢いた。
私が思わず半歩後ずさると、そこにはあの名前も呼びたくないデカい虫の幽霊がいて驚いた。
「どうしたの?」
「イ、イエ、ナンデモナイデス……」
私はドズルさんに、仕事がありますのでと言い残して職場へ戻った。虫の幽霊なんて、視えてもわざわざ言ったりしない。今までの霊能者さんもきっとそうだったはずだ。
そして、今まで誰かの守護霊しか見えていなかった私に、なぜ急に周りの幽霊が視え始めたのか分からないまま、仕事に集中するように意識を傾けた。
そうして残りの仕事を本当に片付け、足りなくなったコピー用紙を取りに別部署からもらいに行くこととなった。
会社の廊下へ出ると、丁度そこに大量の書類を抱えている別部署の人がいて、私も仕事ついでに手伝うと申し出た時に、ひらりと一枚の写真が落ちた。
「あ、すみません、今拾いま……」
拾おうとした写真に手が止まる。その写真に映る子どもに、見覚えがあったからだ。
「どうしました?」
「いえ、なんでもないです」
私はそう答えて写真を拾い、その人が持っていた書類……否、ファンレターを半分抱えて歩き出した。
このファンレターはもちろんあの五人のゲーム実況者さんたちに向けられたものであり、どうやらそれらを処分する途中だったらしい。
そこで私がさっき見た写真は、会社で出した五人のキャラデザされたグッズを枕にして寝ている二人の子どもの姿だった。二人の子どもはおらふくんの熱烈なファンらしく、いつもこうやって寝ていますと親が送ってきたファンレターの一つらしかった。
その写真二人の子どもが、よく似ていたのだ。おらふくんの左右に憑いていた子どもの守護霊に。
あんな可愛らしい生き霊もいるんだなぁと、私は一人関心していたのである。