第3章 弐
「さん、ちょっとこっちに来てもらっていい?」
「は〜い」
私は人に声をかけられ、そちらの方へと向かった。
ここ一週間くらいはずっとこうしてバタバタしていることばかりだ。
というのも、今週末に学祭が迫っているからである。
前々からゼミで出店をすることがは決まっており、ゼミに所属している以上私も全く参加しないというわけにも行かない。
今日の作業を始めて数時間。
学祭に向けてやるべき仕事にも終わりが見えてきた頃、外も暗くなってきたということで解散の声がかかる。
時計を見てみれば19時を差していた。
ゼミの人たちが区切りの良いところで帰る中、私も区切りのいいところまで終えるとアパートへと帰ることにした。
「あ、坂口さん!」
アパートの前まで行くと私より先に坂口さんがいて。
慌てて近くまで近寄る。
「すみません、待ちましたか? 身体冷えてないです?」
そう言いながらも自室の前まで行くと自室の鍵を開けた。
まだ秋とはいえ、肌寒い季節だ。
多忙な彼が風邪をひいてしまっては一大事である。
「ついさっき来たばかりなのでそんなに待ってないですよ」
「それならよかったです」
私が部屋に入れば彼も部屋へと入る。
部屋へ入ってしまえば外気が遮られるというだけで少し温かい。
「では調べますね」
私の部屋へ入るなり彼はいつも通り手際よく調べていく。
部屋を一周して調べ終わると「異常はなさそうです」とこちらを見た。