第8章 哀しい雨
―伏黒恵side―
力なくその場に座り込む夏梨を見つける。
今すぐにでも近くで寄り添ってやりたいが、あいにく、自分にも余裕なんてものは無かった。
ただ、拳を握りしめ、空を眺める。
しばらくすると、ヨロヨロと立ち上がった夏梨が近づいてきた。
そのまま暖かい感覚が全身を包む。抱きしめられている。
そっと自分の胸下辺りにある顔に視線を戻す。
涙でぐちゃぐちゃ。その表情には悲しみと不安、懺悔と後悔。ほんの少しの怒りが滲んでいる気がした。
ぎゅっと抱き締め返す。堪えていた何かが溢れだしそうだったが、泣く訳には行かないと顔を引きしめる。
はだけている夏梨の服装が目に入り、そっと自分の学ランを掛けてあげる。
しばらく2人で悲しみを拭い合うように抱き合っていた。