第8章 哀しい雨
間に合わなかった。
前向きに体が傾いていく虎杖くん。
トサっと地面にぶつかる音。
あ、あぁ…
私がうかうか気を失ってる間に。いつもそう。
私の手の平からどんどん大切な物がこぼれ落ちていくの。
「ゆ、悠仁くん…?」
力無くその場に座り込む。
でもきっと辛いのは私より恵くん。
自分の顎から雫が流れていく。顔がびしょびしょ。涙か雨か分からない
腰が抜けて力の入らない足を無理やり動かして
よろよろと上を向いて立ちすくむ恵くんに近づく。
そのままそっと抱きしめた。
こんな辛い時に1人で戦わせてごめん。
うかうか気絶しててごめん。
もっと早く駆けつけれていれば、1人で背負わすこともなかったのに。
それよりもっともっと早く目を覚ましていれば、虎杖くんは死ななかったかもしれないのに。
ごめんね、ごめんなさい。
そう心の中で謝りながら、ただ恵くんを強く抱きしめた。