【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる
第4章 ④
は戦闘狂ではなく、むしろ争い事を好まない性格だ。
硝子に師事して反転術式による他者の治癒を試みた時期もあったが、他者へのアウトプットも元来持つ感覚によるものらしく彼女が会得することは叶わなかった。
正のエネルギーを身に纏っても特級に近い実力の一級呪霊の攻撃であれば、だってそれなりにダメージは喰らう。
いくら反転術式で自己回復できようと、攻撃を受けた時の体の痛みとそれを耐え忍ぶ精神的な負担が伴う。
それでも彼女は攻撃を回避できないと判断すれば怯むことなく突撃するし、同行者を身を挺して庇うことだってある。
が自分にできることを模索した結果が、反転術式により可能となった自己犠牲だった。
自己犠牲を厭わない彼女を上の連中がいいように利用しているように思えて、僕の癪に障るのだ。
「今まで聞かなかったけどさ、は何で一級になりたかったの?」
「一級になれば請け負える任務は格段に増えますから。術師として最大限できることをしたいんです。」
「それは前に言ってた“生きてる意味を見出だしたい”から?」
「…そんな話、覚えてくれてたんですね。」
はにかみながらもの目には強い意志が宿っていた。
「術師になってその意味は見出だせました。この世界の平穏が術師の犠牲の上に成り立っていることを目の当たりにして、非術師だった私もその犠牲の上で守られていたことを知りました。だから今度は私が守る側になりたいんです。」
は強い。
腐った呪術界を変えたい僕の夢のために、仲間として彼女もいてほしいと思った。
だから彼女の稽古に付き合ったし、昇級を志す彼女の相談に乗って一級への昇級推薦もした。
だが、僕に笑顔を向けるを見ると違う感情が出てくるのだ。
生きる意味だの何だのそんなしがらみは全部捨てて、その笑顔をずっと僕に向けていてほしい。
そんな願望が溢れ出しそうなくらい僕はが好きで、男として彼女に執着している。
「一級術師になった今なら、五条さんが抱える一級案件も私がやれますよ。」
そう言ったに僕は驚きを隠せなかった。
この業界は常に人材不足のため、僕じゃなくてもいいような案件も僕に回ってくる。
何でもできる僕が任されるのは、もはや当たり前のことだったのに。