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【呪術廻戦】あなたに殺された私は呪術師として生まれ変わる

第12章 ある夏の日の情景(外伝・夏油傑視点)







高専に入学した年の夏、姉のから地元の夏祭りに行こうと誘われた私は、その日に合わせて実家に帰省した。
は両親からお下がりで貰えることになった浴衣を、私と一緒に姉弟二人で着たかったらしい。

母からのお下がりでが着た藍染めの浴衣は、今時の色柄様々な浴衣と比べると派手さはないが、鮮やかな藍色を纏うの浴衣姿は奥ゆかしく、我が姉ながら思わず見惚れてしまうほどに美しかった。

「傑、浴衣似合うね。かっこいい。」

同じく父からのお下がりである濃紺の浴衣を着た私を、が顔を綻ばせながら褒めてくれた。

「も、綺麗だよ。」

見惚れてしまっていた私は我に返って、すかさず率直な感想を伝えた。
いつもは可愛いと褒める私から綺麗だと言われたことに照れたのか、はにかみながら「ありがとう」と返事をするは相変わらず可愛かった。



日が沈んだ頃、二人で神社まで来ると、既に祭りを楽しむ人々の活気で賑わっていた。
毎年催されてるこの夏祭りは地元では有名だが、私達が最後に来たのは小学生の時で、それまでは両親に連れられながら来ていたので、こうして姉弟二人だけで来るのは初めてだった。
懐かしくも新鮮な気分に浸りながら、と共に鳥居前で一礼して、一歩踏み出したのだが。


鳥居をくぐり抜けて境内に入ったその瞬間、どこからか呪力の気配を感じた。


「傑?どうかした?」

思わず立ち止まった私につられても立ち止まり、心配そうな顔をしながら私の様子を伺う。

「…いや、何でもないよ。さぁ、お参りしに行こう。」

を安心させるために、私は何食わぬ顔をしながら先へと促した。



祭りの提灯と様々な屋台が両端に連なる参道を、多くの人々が行き交っている。
先に参拝を済ませるために通り過ぎていく屋台を眺めながら、私達は「お腹空いたねぇ」「何から食べようね?」と話を弾ませつつ、本殿へと続くその石畳の道を二人で歩み進める。

本殿前まで辿り着くと、すぐ側にある狐の石像が目に付いた。
稲荷神を祀っているこの神社で、その狐の石像は昔からそこにある何の変哲もない物だ。
だが、先程感じた呪力のことがまだ頭の片隅にあるせいか、その狐の目に見られているような気になってしまった。




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