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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第1章 純情恋物語編






翔吾「Σいぃいででででッ!!(汗)」



更にキツく腕をつるし上げられて悲鳴を上げる翔吾さん

お智ちゃんは、両手で口を押さえて叫んだ



お智「やめてぇ!!////」


にの江「お智ちゃん落ち着いて…」



取り乱すお智ちゃんを落ち着かそうと腕を掴むと、お智ちゃんは掴まれた腕を振り回した



お智「離して姉さん!」


にの江「お智ちゃんっ!」


お智「その方をお離しっ!お前たち!」



あたしの手を振り解くと、お智ちゃんは聞いたことの無いような鋭い声を発した

瞬間、男たちが怯む



お智「あなた方が何処の誰だかは大凡検討がついております

でも

その方を傷付ける事だけは、この私が赦しません

私の身柄が欲しいなら差し上げます故、即刻にその方をお離しなさい」



キリリと前を向いて、ハッキリとそう言うと

お智ちゃんが振り向いてあたしを見た



お智「…にの江姉さん」


にの江「……お智ちゃん……あんた……」


お智「私の、一生のお願いです…どうか、このまま翔吾さんを連れてお帰り下さい」


にの江「お智ちゃん!そんな事したらアンタが…」


お智「………私ね」



お智ちゃんはニッコリ笑うとあたしの手を取った



お智「今まで、一度だって、言い付けられた事を破ったことなんか無かった…

…お父上様に言われるままに、お屋敷を出て…

都合が良くなったら、またお屋敷に戻されて…何処か知らない所へ物みたいに嫁がされる


それでも

それに逆らおうなんて、これっぽっちも考えた事がなかった」



笑顔のお智ちゃんの目尻に

じわりと涙が滲む



お智「……一生、恋など知らずに済めば、聞き分けの良い姫で居られたのに」




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